『「正しさ」の商人』それは現代の社会問題『風評加害』そして『デマ』の本質に迫る1冊
みなさんどうもジャーナリズム。久々にまともな本を買った@xi10jun1です。
『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』という本を買いまして、今回はそのレビューになります。
昨今のインフルエンサーがうるさい帯とか、1%だの9割だのマーケティング汚染されたタイトルみたいな低品質な本にウンザリしていたんですが、そうじゃない中身勝負のまともな書籍をやっと見つけました。
レビューの前置き:本書を読むにあたって
はじめに、本書を購読される方の立ち位置によって最初に読んでほしい箇所が変わるので、まずそこを整理します。
現在までの福島県に関してある程度知っている方(県内在住の方や、ゆかりの強い方など)は最初から、そこまで同県を知らないけど情報災害(風評加害)というものに興味がある方は5章から、それぞれ読むことを勧めます。
理由としては、本書の大部分を占める福島県を巡る風評加害の実態について、その認知度や理解度に温度差があるためです。
特に2章からは心がツラくなる内容(風評加害の具体的な事例)も出てきますので、後者の方はまず『震災から10年以上経過した現在の福島県がどういう状態なのか』を記した5章から読んで知っていただきたいです。
ご自身の福島県に関する情報をアップデートした上で1章から読み進めていくと、そこに至るまでの過酷なプロセスの理解がより深まるでしょう。
余談ながら、2章に関しては書き上げるに至った筆者の心情は察するに余りあります。『震災のあとでこんなことが起きていたのか』と驚かれるかもしれませんが、紛れもない事実です。
全体レビュー:情報災害(風評加害)の実態について丁寧にまとめられた希少な書籍
本書は、東日本大震災後の福島県に対する情報災害(風評加害)の実態と経験を記し、以って現代に蔓延るデマ、フェイクニュース、ミスリード、陰謀論といった問題のメカニズムを解き明かす内容となっています。
震災そのものの被害と教訓を伝えるコンテンツは数あれど、その後に起きた情報災害(風評加害)の実態についてこれほど丁寧にまとめられた書籍はほとんどなく希少な1冊です。
本来であれば、ジャーナリズムのプロたる記者やジャーナリストからこういった書籍が出るべきなんですが、なぜ無いのか?希少なのか?
そこに『「正しさ」の商人』というタイトルの妙があり、本当に風化させてはいけない福島県のリアルな話が本書の肝となっています。
福島県で起きた過酷な実態を多くの人が『知らないまま』、もとい『知らされないまま』あまつさえ『責任を取らないまま』でいる現実。そしてそれが現在進行形で現代の諸問題に通じていて、知らぬ存ぜぬで生きているあらゆる人の不利益として降りかかっている事実。
それらがここにまとめられています。
現代に繋がる『情報災害(風評加害)のメカニズム』を知りたい方にオススメ
情報化社会の現代においては、度々『デマ』『フェイクニュース』『ミスリード』『陰謀論』が問題視されて久しいです。ネットの情報やメディアのタイトルに騙されるなど、多くの人が経験しています。
しかしそれらを
- 誰が
- 何の目的で
- どのように
- どうやって
- なぜ広まり
- 私たちはどうすればいいのか?
を把握できている、あるいはメカニズムを知っている現代人がどれだけいるでしょうか?
本書は福島県に対する情報災害(風評加害)の実例と筆者の体験を記すだけではなく、それらを社会学的にアプローチすることで『なぜ人はこうなるのか?』を理解するのに役立ちます。
分かりやすくないからこそ意味がある
反面、学術的な記述はもちろん、放射線にかかる知識や細かな計算のほか、HPVワクチンの事例などは医学的な知見も書かれているので分かりやすさを期待しないほうが良いです。
しかし、だからこそ意味があります。
近年はあらゆるメディアで『分かりやすいこと』に価値が置かれているきらいがありますが、それが情報の正しさを錯覚させている、言うなれば『ユーザーを甘やかしている』ように感じてなりません。
学生のときに初めて習った計算や文法を必死に覚えようとするのと同じで、難しい文章を見てもそれを理解しようと努められるかどうかが、『「正しさ」の商人』の餌食になるか否かの分水嶺だと思います。
まとめ:『「正しさ」の商人』に大切なものを買い叩かれる前に
昨今世間をにぎわす諸問題には、必ずと言っていいほど『デマ』『フェイクニュース』『ミスリード』『陰謀論』がついて回っています。
それが他人事のうちはいいですが、自分事になったときにどうなるか。
- どうして正しい情報が伝わらないのか
- どうしてデマばかり広まるのか
このメカニズムをどれだけ知っていますか?
その疑問に本書は的確に答えてくれていますし、大切なものを買い叩かれる前に『「正しさ」の商人』のことを知っておきましょう。
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