個人投資家の逆襲:金なしコネなし知識なしの弱小投資家が判例100選に載るまでを読了!
どうも!DCF法もMBOも勉強したのにすっかり忘れてしまった@xi10jun1です。
山口三尊(やまぐちみつたか)さんの著書、「個人投資家の逆襲:金なしコネなし知識なしの弱小投資家が判例100選に載るまで」を読了しましたので紹介します。
これは投資家のみならず、経営・経済を学ぶ学生、金融機関への就職を目指す方、会社法を勉強されている方は必読です!
「個人投資家の逆襲:金なしコネなし知識なしの弱小投資家が判例100選に載るまで」の概要
→個人投資家の逆襲: 金なしコネなし知識なしの弱小投資家が判例100選に載るまで (Mulan)[Kindle版]
著書は、著者の山口三尊さんがこれまで経験されてきた、個人投資家としての訴訟を綴ったノンフィクション作品。
山口三尊さんについてはこちら
ツイッター:@kanebo162
ブログ:http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/
概要
投資ファンドによる企業買収(TOB)や経営陣による自社株買収(MBO)に際して、山口三尊さんが個人あるいは団体の代表として、買収時の適正価格を争ってきた数々の事例と経緯が赤裸々に綴られています。
主な事例はこちら。
- カネボウ事件(TOB)
- レックス・ホールディングス事件(MBO)
- サンスター事件(MBO)
- サイバード事件(MBO)
- CCC(カルチュアコンビニエンスクラブ)事件(MBO)
- コージツ事件(MBO)
これ全部、山口さんが個人あるいは団体として訴訟を行ってきたんですね・・・。
書籍にはこれらの事例の他、MBOが起きる理由とその経緯、訴訟の方法や手続きの際に提出する書類のひな形まで掲載されています。
感想:個人投資家でも企業と戦えることを証明した画期的なノンフィクション!
株の本というと、「儲かる方法」とか「○○投資法で勝てる」などといった書籍が目立ちますが、こちらは株主としての権利に着目したとても珍しい書籍だと思います。
例えば、100万円で買った自動車を売主取り上げられ、文句をいうと、
「なら40万円払ってやる。こんな中古車、相場は30万円だ。3割も高く買ってやるのだから、ありがたく思え」
と言われたら、どう思うか。
おそらくもう二度と車なんて買わない、と思うはずだ。
ところが、株の世界では、こういうことが許されている。
これをMBOという。
引用元:個人投資家の逆襲: 金なしコネなし知識なしの弱小投資家が判例100選に載るまで (Mulan)[Kindle版]序章より
株は本来、会社の事業内容から将来得られる見返り=リターンを期待して買うものです。つまり、1,000円で買った株式が2,000円になって売却益が出たり、配当金や株主優待がもらえたりするのを期待して買うのです。
それなのに、その株式を発行した会社から「MBO(経営者が株式を買い取り=所有)する。あなたの株式を800円で買います。よろしいですね?」と理由(800円で買うという公正公平な理由)もなくいきなり突き付けられるのが、山口さんが戦ってこられたMBOの内容だったのです。
そもそも、株式はたくさん持っている人の方が権利が強いのです。いわゆる個人投資家のほとんどは、会社の株主ではあるけれども株式の持ち分が少ないので、発言力は弱いのです。
AKBで言えば「総選挙」の投票権と同じです。CDを100枚買って100通投票できる人と、CD1枚買って1通投票できる人、どちらの影響力があるかです。
それを利用(?)した会社側は、株主(個人投資家)が本来納得できない価格でありながらも、(どうせ分からないだろうと思って?)理由も不明確なまま買い付けを行うことで、自らの利益としてきたのです。
その点において、山口さんが個人投資家でありながらも、MBOによる買い付け価格を争ってきたことは、とても意味のあるものだと思います。例え、個人投資家で発言力が弱くても、会社側の一方的な価格決定に抗うことができること、さらに覆ることを証明したのです。
株主として、オカシイと思うことはオカシイと言っていいんだ。
そんな主張が、事件ごとに感じられ、とても読みごたえがありました。
ただ一方で、ここから見えてきたのは「株価の適正な価格」というものの認知が、社会的にも無さすぎるということ。企業はもちろん司法の場でさえ、「株式の価格への公正・公平なアプローチ」がなされていない。むしろ株主(個人投資家)は敵、邪魔者として扱われているような節が、書籍から見え隠れしています。
それでも書籍にもある通り、平成25年10月から、東証では「MBO時は価格の根拠を明示すること」を求めるようになっていますし、TOBやMBOの際に適正なプレミア価格がつくようになってきたようです。
まとめ:MBOの勉強や戦いたい投資家へ
この書籍は投資家はもちろん、法学・経済・経営系の大学生は必読と言えます。銀行、証券会社といった金融系の企業への就職を目指す方、会社法を専門とする弁護士を目指す方などは特に。
書籍にも明記されていますが、MBOの訴訟の主な判例が掲載されていますし、DCF法も含めた解説も丁寧になされています。専門書を読むより、実際に何が起きたのかを知ることの方が有意義ではないでしょうか?
重ねて書きますが、本来の株主としての権利に着目したとても珍しい書籍です。山口さんが訴訟で経験したこと、また日本におけるMBOについて、602円という値段で勉強できるなら安いものですよ!
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